第30章 Suspicion
無事受け付けを済ませた俺達は、刑務官案内の元、面会室へと通された。
そこは、以前智君が収監されていた所とは違う、とても開放的な雰囲気な部屋で…
驚いたことに、外の世界と中の世界を遮る壁が一切なく…
あるのは、ダイニングテーブルのような、少し大きめのテーブルと、パイプ椅子が幾つかあるだけ。
「どうした? 落ち着かないか?」
「いや、そんなことは…。ただ、こういったケースは初めてだから…」
こういった面会室を備えた刑務所があるとは、噂では耳にした事があるけど、まさかここがそうだったとは…
「まあな…、俺も正直落ち着かない」
岡田が…?
俄に信じ難いことだけど、その言葉に偽りがないことは、その様子からも見て取れる。
いつだって堂々としている岡田が、しきりにネクタイを緩めては締め…、を何度も繰り返している。
「岡田でも緊張とかするんだな?」
揶揄うように言うと、岡田は一瞬唇をキュッと結んで、横目で俺を睨み付けてきた。
そして鞄をゴソゴソと漁ると、愛用のペンとノートをテーブルに並べて置いた。
「お前も無駄口ばっか叩いてないで、とっとと準備しろ」
「はいはい、岡田さん」
俺は肩を揺らしながら答えると、鞄からタブレットを取り出し、テーブルの上に置いた。
その時だった。
面会室のドアがノックされ、ゆっくりと開いたドアの向こうに、刑務官の影に隠れるようにして立つ、智君の姿が見えた。