第30章 Suspicion
「岡田には全部お見通しだな?」
「当たり前だろ? どんだけお前とコンビ組んでると思ってんだ?」
だよな…
岡田が相棒じゃなかったら、俺はとっくに全てを投げ出していたかもしれない。
智君とちゃんと向き合うこともせずに…
「お前にはホント感謝してるよ」
俺一人の力じゃ、ここまで辿り着くことすら出来なかったんだから…
「ばーか、そう言う事は、ちゃんと大野の冤罪晴らしてから言え」
「それもそうだな…」
俺達はまだ、ほんの一歩を進めたばかりなんだよな。
「おっ、着いたぞ」
それまで岡田に向けていた視線を車窓に移すと、そこには反り立ったコンクリートの壁があって…
俺は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
何度来ても、このなんとも言えない威圧感にだけは慣れないな…
逆に慣れてしまうのも、それはそれで考えものだけど…。
「よし、行くぞ」
車を駐車場に停め、岡田が運転席のドアを開け、車から降りる。
その後を追うように、俺も助手席のドアを開けた。
普段と変わらない筈の鞄が、どうしてだかズシリと重く感じる。
「取り敢えず受け付けだけ済ませるか…」
「そうだな…」
俺達弁護士は立場上、受刑者との面会にそれ程厳しい制約がある訳では無いが、一通りの手続きだけは済ませる必要がある。
受刑者側から面会を拒否される場合もあるし、もし仮に懲罰を受けていたら…
それこそ無駄足だ。