第29章 Rouse
白々と夜が明けるのを、俺はまんじりともしないまま見つめていた。
どれだけ記憶を遡ってみても、見つからない答えと、そして纏まらない考えに、苛立ちさえ感じながら…
ただ、その中でも一つだけ、思い出したことがある。
それは、俺が結の部屋を出た時…、あの時までは確かに結は生きていたのかもしれない、ってことだ。
俺が最後に見た結の顔は、少なくとも刑事から見せられたあの写真のように恐ろしく歪んではいなかった。
とても穏やかな寝顔だった。
だとしたら、結が殺されたのは、俺が部屋を出た後、ってことになる。
俺が結の部屋を出たのは、確か午前10時を僅かに過ぎた頃だった。
点けっぱなしになっていたテレビ画面の表示を見たんだから、それは間違いない筈だ。
だが俺を取り調べた刑事の話では、結の死亡推定時刻は、それよりも二時間以上も後になっていた。
もっとも、あくまで”推定“である以上、正確な殺害時刻ではないのかもしれないが…
そう言えば森田は…?
あの時、あの部屋には、森田の姿はどこにもなかった。
でも俺が部屋を出る時、玄関には見慣れない、俺以外の男物の靴が確かにあった。
あれは森田の物だ。
同じ現場になった時に穿いていたのを記憶しているから、間違いない筈だ。
森田は部屋のどこかで息を潜めて、俺が部屋を出るのを待っていた?
思い出せ…
思い出すんだ…
きっとある筈だ、手掛かりとなる何かが…