第29章 Rouse
そうだ…
あの晩、結は俺にカーテンを閉めるように言った。
結が夕方になるとカーテンを閉めるのは常のことだったし、俺も結の頼みを当たり前のように受け入れていた。
だからカーテンは当然閉まってなければいけなかったんだ。
なのに俺が目を覚ました時、カーテンは開いた状態で、東向きの結の部屋には、眩しいくらいの朝日が差し込んでいた。
その東側の窓には、ベランダがあった筈だ。
洗濯ものすら外に干すのを躊躇った結だったから、窓を開けることは滅多になかったが…
もし森田がそこで、俺が目を醒ますのを、じっと息を潜めて待っていたとしたら…?
なんてことだ…
どうしてあの時、些細な部屋の変化に気付かなかったんだ…
翔に会いたいがために俺は…みすみす結を見殺しにしたんだ。
これじゃ俺が結を殺したも同然じゃないか…
それにマサキにしたって…
直接手を下していないだけで、俺が殺したも同じだ。
それなのに被害者面して…
最低だな、俺…
でも過ぎたことを今更後悔したって仕方がない。
今は兎に角、俺に着せられた無実の罪を晴らすことだけを考えるんだ。
でないと俺はこの先一生、翔と肩を並べて歩くことなんて出来やしないんだから…
俺はその日の午後、担当弁護士との接見申し立て書を、担当刑務官を通じて提出した。
岡田と、そして翔に宛てて…
『Rouse』-完ー