第29章 Rouse
ギシギシと音を立てる、安っぽいベッドの上で膝を抱える。
窓の外を染めていた茜色は、いつしか闇の色にすっかり様子を変えていた。
はこばれた食事には手を付けず、ただただ爪を嚼み、纏まらない思考に頭を巡らせる。
森田が結を殺した理由…
それがどうしても分からない。
もし俺に恨みかあるのなら、こんなまどろっこしい手を使わなくても、俺を殺せば済むことだ。
もっとも、 俺には森田から恨みを買うような覚えは、一切ないが…
でも結は殺され、俺はこうして生きながらえている。
仮に…もし仮に、結と森田が最初っからグルだったとしたら?
考えたくはないが、可能性がないわけじゃない。
だとしたら、俺は二人にとって邪魔な存在でしかなかった筈だ。
森田が俺を疎ましく思うのも頷ける。
でもそんな簡単な理由で?
それに仮にそうだったとしても、そこに結が殺されなきゃならない理由は見つからない。
俺を消して、二人でよろしくやればいいんだから…
それに最後に見せた結のあの顔…
今にも泣き出しそうな、苦悩に満ちたあの顔…
そして小さく動いた唇…
「ごめんね…」
確かに結はそう言った。
森田に気取られないように、濃いピンク色に塗った唇を僅かに動かして…
あの言葉の意味は何だったのか…
結…お前は俺に何を伝えたかったんだ…