第29章 Rouse
アイツさえ…森田さえいなければ…
俺はこんな所にぶち込まれなくても済んだのに…
それにマサキだって…
森田が俺に結を紹介なんてしなければ、もしかしたらあんな最期を迎えなくても済んだんじゃないか…?
沸々湧き上がってくる怒りに、俺の指はマサキの残した壁の傷に爪を立て、食いしばった歯はギリギリと音を立てた。
許さねぇ…
森田だけは、絶対に許さねぇ…
壁に叩き付けた拳がヒリヒリと痛み、赤い雫がポツンと床に落ちる。
きっとマサキと結が受けた痛みは、こんなもんじゃない筈だ。
もっと苦しくて…辛くて…
そしてどれだけ怖かったことか…
そもそも結が殺されなきゃいけなかった理由は?
俺と付き合ったから?
まさか…
そんな簡単な理由で、レイプを装ってまで殺す必要があったのか?
わざわざ俺を眠らせておいて、精液まで採取して…?
ただ俺が憎ければ、俺を殺せばいいだけの話だ。
何も関係の無い結を殺さなくても良かった筈だ。
なのに何故…
分からない…
考えれば考える程、結が殺された理由が…
ああも無残に殺されなきゃならなかった理由が…
分からない。
なあ、マサキ…
お前、何も聞いてなかったのか、結から…
もし何か知ってんなら、教えてくれよ…
なあ、マサキ…