第29章 Rouse
結の死を知らされたのは、その後のことだった。
数台のパトカーに囲まれるようにして警察署に連行された俺は、殺風景な…机とパイプ椅子が幾つか置かれただけの、それ以外は何もない部屋に、俺は押し込まれた。
やがて、俺を無理矢理ねじ伏せた警察官とは違う、別の警察官がやって来て、俺の目の前に数枚の写真を並べた。
血に塗れ、断末魔の苦しみに歪んだその顔は…
そこに写っていたのは…紛れもない結の姿だった。
込み上げる吐き気を必死で堪える俺に叩き付けられたのは、あまりにも残酷で、無情な言葉だった。
「お前が殺ったんだよな、大野…」
と…
翌々考えればおかしな話だった。
俺はパトカーにのせられた時も、蛇のような目をした刑事と対峙した時も、正式な逮捕状なんて物には、一切お目にかかっていないんだから…
俺に見せられたのは、それまでに見たこともない、酷く恐ろしい顔をした結の写真と、結の体内に残されていたという、俺の物と思われる精液をDNA鑑定した結果を記した用紙、それだけだった。
それを見せられた瞬間、俺は漸く気付いたんだ。
俺は嵌められたんだ、と…
あの日、目覚めた瞬間から感じていた倦怠感と、頭が割れそうな頭痛…
あれは酒のせいなんかじゃなかったんだ。
おそらくは、睡眠薬か…若しくはそれに近い物の仕業だ。
そして深い眠りに落ちた俺から、どんな方法を使ったのかは分からないが、俺の精液を採取して、それを…
そんなことが出来たのは、アイツ…森田しかいない。