• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第29章 Rouse


そしてあの日はやって来た。

クリスマスを目前に、賑わう雑踏の中で、俺は翔へのクリスマスプレゼントを手に、ショーウインドーの壁に掛けられた時計を見ていた。

翔へ贈るためのプレゼントと同じ時計を腕にはめて…

この年になって揃いの物を身に着けるなんて…、しかも男同士で、なんて正直考えたこともなかったし、馬鹿らしくも思う。

それでも翔の驚く顔と、その後に浮かぶちょっと照れたような笑顔を想像すると、それだけで俺の胸は弾んでいた。

そしてあの鐘…
午後6時…、約束の時間を知らせるあの鐘が鳴った。

ゴーンゴーーン、と…

今思えばあの鐘の音は、地獄の扉が開いたことを知らせるための合図だったんだと思う。

陽気な音楽と、躍り出す人形達は、規則正しく足並みを揃えた、死刑執行人と言ったところだろうか…

俺はその瞬間、それまでの浮かれた気持ちを粉々に打ち砕かれた。

俺を取り囲んだ数人の警察官は、俺をいとも簡単に地面にねじ伏せ、俺の両手に手錠をかけた。

翔の前で…

翔が見ているその前で、俺は成す術もなくアイツらに引き摺られるようにしてパトカーに押し込まれたんだ。

一体何が起きている…
俺が何をしたっていうんだ…

いや、俺は何もしちゃいない…

涙で滲んだ視界に映ったのは、翔のために選んだ、揃いの時計が入った紙袋だった。

無数の足に踏みつけにされて、ボロボロになった紙袋だけが、真っ白になる視界の中に、まるで浮かび上がるように映っていた。
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp