第29章 Rouse
結の部屋を出た後、俺は真っ直ぐ翔の部屋へと向かった。
翔が待っている…、そう思ったから。
でも翔は部屋にはいなくて…
ふと思い出してスマホのメールを開くと、そこには急な仕事が入ったことを知らせるメールが届いていた。
仕方なく俺はソファーに横になると、俄かに重い瞼を閉じた。
俺の身体に残る気怠さと、頭の痛みを、どうしても鎮めたかった。
少し休んでからでも晩飯には十分間に合う…
俺は部屋で待ってることをメールで知らせると、そのまま深い眠りに就いた。
どれくらい眠っていたのか、目が覚めた時には、窓の外には夕焼け空が広がっていて…
眠ったおかげだろうか…
身体は随分楽になっていたし、割れるように痛かった頭も、スッキリとまでは行かないくとも、幾らかはマシになっていた。
そのまま翔からのメールを確認すること無く、俺はキッチンに立つと、カレーを作り始めた。
翔の、美味そうに食べる姿を想像しながら…
翔の帰りを、今か今かと待ち侘びながら…
俺は翔のためにカレーを作った。
そして翔の足音が聞こえた瞬間、俺の胸は期待に膨らんだ。
早く…
早く俺を抱き締めてくれ…
俺の冷えた身体を、お前の暖かい腕で…
そうだ…あの時俺は、何故だか不安で仕方なかったんだ。
だから、翔の顔を見た瞬間、自分の欲望を抑える事が出来なかった。
無我夢中で翔を求め、翔に導かれるまま、快楽に身を任せた。
それが翔との…
翔と愛し合った、最後の夜だった。