第29章 Rouse
気怠い身体を起こし、ズキズキと痛む頭をブルンと振ると、突然眩暈のような感覚に襲われて、俺は思わず頭を抱え込んだ。
二日酔い…
そう思った。
普段なら少々強めの酒を飲んだからって、そう簡単に酔っ払ったりはしない。
でもあの日は…
そうだ、前の現場での仕事が終わって、新しい現場の手伝いに行ったんだ。
新しい現場での慣れない仕事に、俺の身体は酷く疲れていたんだ。
だから、少々の酒でも酔ったんだ、と…
でも、それがそもそもの間違いだったんだ。
結の部屋に行かなければ…
疲れているからと理由を付けて、断っていれば…
もしかしたら結は…
いや、違うな…
結は知っていたんだ。
森田が仕組んだ罠を…
だからあの日、結は森田を部屋に招き入れたんだ。
自分が殺されるとは知らずに…
そして俺も…
あの時、結は寝ているもんだとばかり思っていた。
実際はそうじゃなかったのに、俺が目を覚ますよりも前に、何者かによって殺されていたのに…
それが森田なのか、それとも森田以外の誰か、なのかは分からない。
あの日結の部屋にいたのは、俺と結、そして森田だけだったから…
なのに俺は、結を起こさないようにと、結に声をかけることなく部屋を出てしまった。
あの時気付いていれば、もしかしたら今頃は…
いや、仮に気付いていたとしても、おそらく結果は同じだ。
俺はやってもいない罪を被せられ、結果ムショ送りになっていたことには変わりはないんだから…