第4章 Confusion
「離せって…」
「お前が行った所で、アチラさんは真面に取り合ってはくれんよ?」
岡田の言う事は尤もだけど、でもそれじゃあ俺の気が済まない。
「じゃあどうしろって言うんだ? このまま指咥えて見てろって? 俺はそんなのごめんだね!」
ありもしない証拠を並べ立てられて、このまま泣き寝入りなんて、出来るもんか…
「分かった、分かったから、少し冷静になろうぜ? な、櫻井?」
「俺は冷静だ!」
そう、俺は至って冷静だ。
いや違うな…
冷静にならなきゃ、って必死で自分に言い聞かせてる。
「お前はそのつもりかもしれんがな…」
見てみろ、と岡田の目が周りをグルッと見渡す。
「あっ…」
俺が視線を向けた途端、思い出したように弁護士料に目を移す先輩弁護士や女性事務員。
「な? ちょっと外出るか?」
岡田の腕が俺の肩に周り、俺はそのまま岡田に引きずられるように事務所の外に出た。
事務所があるビルを出ると、冷たい風が俺達の横を通り抜けた。
「寒っ…! おい櫻井、コーヒーでも飲むか?」
俺達は寒さを凌ぐため、隣のビルにある喫茶店へと入った。
「やあ、いらっしゃい。今日は寒いなぁ…」
マスターの茂さんが、ポットを片手に人の良さそうな笑顔で俺達を出迎えてくれた。