第4章 Confusion
「嘘…だろ?」
岡田から聞かされた話に、俺は愕然とする。
「だってそんな筈ある訳が…」
「な? 俺だって驚いたよ? まさか、ってな?」
岡田が深い溜息と同時に、デスクに身を乗り出した。
「だがな、櫻井。お前、知らなかったんだろ? 大野に彼女がいること…」
そうだ…
確かに俺は知らなかった。
この事件が起きるまで、智君に俺以外の恋人がいるなんて、俺は知らなかったし、思いもよらなかった。
「でも…!」
堪らず握っつ拳をデスクに叩き付けた。
一瞬事務所内に水を打ったような静寂が訪れた。
経理担当の女性事務員が恐る恐る俺を振り返った。
それでも俺の気持ちが治まる筈もなく…
「俺、検察行って直接確かめて来る」
ガタガタと席を立った俺を、岡田の手が制した。
「落ち着けって…。こうなること分かってたから、お前には言い出せなかったんだよ…」
「当然だろ? そんな話聞かされて、冷静でいられる訳ないだろ?」
俺は岡田の手を振り払い、背もたれに引っ掛けたジャケットを引ったくると、事件の資料が詰まったビジネスバッグを手に事務所を出ようとした。
「ちよ、待てって!」
でも寸前の所で岡田に肩を捕まれる。