第28章 Regret
その後、侑李の淹れてくれたお茶を一杯ご馳走になってから、俺達は長瀬さんの工場を後にした。
侑李の精神的疲労と、俗に言う“娑婆”に出たばかりの松本を気遣ってのことだ。
勿論、長瀬さんに関しても同様で、一見何事もなかったかのように気丈に振舞ってはいるが、実際は疲弊しているに違いなかったから。
工場の事も気にはなったが、放火犯は捕まっている事だし、特に心配は無かったが、それでも用心するに越したことはなく、何かあればすぐに連絡をくれるようお願いした。
岡田の運転する車に乗り込んだ俺は、帰り際に松本から手渡された、検閲済みの赤い判の押された茶封筒を鞄から取り出した。
宛名は、松本本人になっている。
「開けないのか?」
迷う俺を見兼ねたのか、ハンドルを捌きながら、岡田が横目で俺を見る。
「いや、開けるよ。開けるけどさ…」
裏面に書かれた、差出人の名前を見た途端、開けるけのが怖くなった。
差出人の欄に書かれていたのは、「相葉雅紀」の名だったから…
「お前の気持ちは分からんでもないが、松本が自分に宛てた手紙を、わざわざお前に寄越したんだ。お前にとって意味があるモンなんじゃないのか?」
「そう…だよな…」
それでも残る不安を打ち消すように、深呼吸を一つすると、俺は封筒の封を開けた。