第28章 Regret
「ただ今戻りました」
いつもと変わらない様子の深山さんの隣で、侑李が今にも泣き出しそうに顔を赤く染め、小さな拳を震わせる。
「ああ、ご苦労だったな。で、本当に森田で間違いないんだな?」
長瀬さんが席を立ち、代わりに怒りから…だろうか、身体を強ばらせる侑李を座らせた。
「アイツ…笑ってた…。僕らの目の前で…笑ったんだ!」
珍しく感情を露にした侑李が、キュッと唇を噛み、膝の上で握った手を震わせた。
「どういうことだ?」
岡田が深山さんを見上げる。
すると深山さんはゆっくりと首を横に振ってから、スっと息を吸い込んだ。
「どうもこうも…。僕には“森田”と言う男がさっぱり理解出来ませんね。罪の意識なんて、微塵も感じられませんね。寧ろ、太太しいと言うか…」
普段は表情を崩すことなんて滅多にない深山さんが、何とも悔しそうに眉間に深い皺を刻んだ。
「そうか…、それはご苦労だったな。で、ご苦労次いでで悪いんだが、調べて欲しい事があるんだ」
岡田が手帳のページを一枚切り取り、それを深山さんに差し出す。
「斑目法律事務所なら、簡単だろ?」
「まあね」
受け取った深山さんは、一瞬メモに視線を落としてから、当然とばかりに、不敵に歪ませた唇の間から白い歯を覗かせた。