第4章 Confusion
事件当日の足取りがどうしても掴めない、そう嘆く岡田に、俺は事実を打ち明けた。
殺害予想時刻、俺と智君は俺の部屋で、熱に浮かされたように愛し合っていた、と…
「マジか…? それだと、お前が証言台に立つことにもなり兼ねんな…」
そう言ったきり、岡田は頭を抱え込んだ。
「実はな、櫻井。これは検察側からの情報なんだが…」
あくまで未確認なんだが、と付け加えて岡田が渋い表情で口を開いた。
「どうもアチラさんではとんでもない証拠を手に入れたようなんだ」
「とんでもない、って? だって智君はあの日…」
「そう、そうなんだよ。だから俺もちょっと釈然としないって言うか…」
どうにもハッキリしない岡田の口調に、俺の苛立ちが募っていく。
「言えよ、岡田。検察は何を手に入れたんだ!」
掴みかかろうとする勢いで岡田を攻めたてる。
「分かった、分かったから、落ち着けよ、櫻井…」
力勝負では圧倒的に優位に立つ奴だが、威圧的な態度で攻め込まれるのは滅法弱い岡田だ。
よくもこんな気の弱い奴が弁護士なんかやってるもんだと、つくづく思い知らされる。
岡田が観念したのか、スッと息を吸い込むと、重い口を開き始める。
「実はな…」
岡田がキュッと表情を引き締めた。