第28章 Regret
俺はタブレットの上を忙しく動き回る手を止め、湯吞に残っていたお茶を飲み干した。
「で? 森田は君になんて? 勿論差し支えなければ、でいいが話してくれないか?」
空になった湯吞を茶托に置くのを見計らってか、岡田が質問を続ける。
「君と森田の間には、これと言って関わりがなかったのに、何故森田は君に?」
「俺もそれは不思議だったつーか…。アイツ、俺がその例の弁護士と面会したこと知ってたんだよな…。それに会話の内容まで…」
短く刈り上げた頭を掻きながら、松本が何度も首を捻っては、表情を険しくする。
「君が誰かに喋った…とかではなく?」
仮に松本自身が森田と関わりがなくても、他の”誰か”が、って可能性がないわけではない。
でも、
「いや…、誰にも…。だから変なんだよ…」
確かに松本自身が他言しなければ、会話の内容が他人に漏れることはないだろう。
「ってことは、誰かが情報を漏らしてた…とか?」
「いや、その可能性はゼロではないよ。でも、もしも…これはあくまで推測の域を出ないんだが、もしも森田自身もその”弁護士さん”とやらと繋がっていたとしたら?」
岡田がとんでもないことを言い出す。
でもその説も満更捨て切れないのは事実だ。
受刑者と弁護士の関係は、”悪”と”正義“…
一見真逆に見えるが、実ははかなり濃密な関係ともいえる。
何故なら、俺達”弁護士”は”犯罪者”と呼ばれる者達の人権を守るために存在しているといっても過言ではないからだ。