第28章 Regret
「では、君は森田とは、直接関わりはない、と?」
岡田が手帳にペンを走らせながら、松本に質問を投げかける。
「まあ、そうなるか…。森田とは房も違えば、工場も違ったし…」
刑務作業を行う工場は、各監房毎に振り分けられていると聞く。
だから、監房が違えば、工場も違うのは当然、と言えば当然のことだ。
それに刑務作業中にしろ、風呂の時間にしろ、受刑者達の行動には、常に刑務官からの厳しい監視の目が光っている。
自由に会話を楽しむなんてことは、それこそ同房にでもならない限り、難しいのかもしれない。
手詰まり…
俺はテーブルの上に置いたボイスレコーダーに手を伸ばした。
これ以上は何の情報も得られない、そう判断したからだ。
でも、その時…
「いや、待てよ…? 一度だけ…だが、森田が俺に言ってきたことがある」
「何て?」
俺は咄嗟にボイスレコーダーに伸ばした手を引っ込め、タブレット上のキーボードに指を滑らせた。
「あれは確か…、親父と弁護士が面会に来たすぐ後だ。丁度、作業の合間の休憩時間の時だったか…。森田の方から俺に声をかけて来たんだ」
「で、でも君たちの間には何の繋がりもなかったんでは?」
「そうなんだよ。だから俺もおかしいと思ったんだ。お互い面(つら)は知ってても、それ以上の関係はなかったんだからな…」
松本が心底不思議そうな顔をして首を捻った。