第28章 Regret
愛用の手帳を開き、岡田がペンを握ったのを確認して、俺はボイスレコーダーとタブレットを準備する。
元々アナログ人間の岡田と、何方かと言えばデジタル人間の俺…記録の取り方はそれぞれだ。
「その“森田”って男とは現場で?」
岡田が口火を切る。
「ええ、そうですそうです。確かあん時はまだ、喜多川建設からの受注も多くて、頻繁に現場にも出入りしてましたからね」
その時に智君とも出会った、ってことか…
「どんな感じの男でしたか、その森田って男は…」
俺の質問に、長瀬さんが無精髭の生えた顎を手で擦りながら、うーんと首を捻った。
そして、一瞬険しい顔をしたかと思うと、今度は頭をボリボリと掻き始めた。
「いやね…、一言で言うと、相当悪さしてる奴だろうなとは思いましたよ。墨は入ってるし、見た目もその辺のゴロツキと変わんないですからね…。でも、話してみると案外良い奴でしてね…。ソイツがまさか…」
信じられない…、と言った所だろうか…
長瀬さんが悔しそうに顔を歪ませた。
「松本さんは? 森田とは…」
視線が一気に松本へと集中する。
「君はさっき“知ってるかも”と言ったけど…」
「顔見知り…って程でもないがな? 房も違ったし、アイツはなんつーか…一匹狼的なトコがあったからな」
松本が記憶の糸を辿るように、ゆっくりと言葉を紡いだ。