第28章 Regret
長瀬さんの話によると、工場に火を付けたのは森田と言う男で、長瀬さんは勿論、侑李とも面識があるらしく、この男もまた喜多川興業とは、決して深くはないが、関わりのある男だということだった。
「おそらく喜多川興業の差し金だろうな…」
「ああ、俺もそう思う。けど…」
長瀬さん自身、喜多川興業に恨みを買うような所見は見られないってことだ。
しかも、だ…
「俺、ソイツ…森田って奴? 知ってるかも知れねぇ…」
松本も森田と面識があるかもしれないと…
「櫻井…。大野の件は暫くお預けだ。先ずは、森田って男の話を聞かないとな?」
岡田の提案に、俺は従わざるを得ない状況なのは、火を見るより明らかで…
「ああ、分かってる」
俺は岡田に向かって頷いて見せた。
智君の身に起きたことを、松本の口から聞きたい…
その気持ちがない訳では無い。
それでも岡田の判断に委ねたのには、それなりの理由があったからだ。
長瀬さん自身に、放火までされる心当たりがないとなれば、原因は少ながらず智君にあるのでは?
現に、智君と長瀬さんは、元々は仕事上での関係でしか無かったが、それも今では侑李を介して深く繋がっている。
もし…
もしも、だ…
智君と関わったことが原因で、放火までされたとしたら…
これはなんらかの“警告“…なのか?