第28章 Regret
「なあ、櫻井?」
床に蹲った俺に目線を合わせるように、岡田がその場にしゃがみこんだ。
「もし、もしも、だよ? お前が大野ただ一人の為に闘う、って言うなら、やっぱりお前はこの件から手を引け。…いや、手を引くべきだと俺は思う」
俺に、智君の事件にこれ以上関わるな…と…?
そんなこと俺には…
「出来ないよ…。だって俺以外の誰が智君を守れる? 俺がやらなきゃ…」
智君は…
「お前の気持ちは痛いほど分かる。だがな、櫻井。この先、事件が明らかになればなる程、今よりももっと残酷な現実を目の当たりにすることになるんだ。それにお前は耐えられるのか?」
岡田のいつになく真剣な眼差しが、まるで俺の心の奥底まで見透かしているみたいで…
俺は思わず岡田から視線を逸らした。
「分かってる。こんなの序の口だ、って…、俺にだって分かってる…。でも…」
乗り越えなきゃいけないんだ、弱い自分を…
あの日、何人もの警官に取り囲まれながら、ほんの一瞬だった…
一瞬のことなのに、縋るように俺を見たあの目が、俺はどうしても忘れられないんだ。
「頼む…、もう少し…、次にお前が無理だと判断した時点で、俺は智君の件からは一切の手を引く。だから、もう少し…、あと少しの間でもいいから、俺にやらせてくれないか?」
俺は岡田にむかって、床に頭が触れるくらい、深々と頭を下げた。