第28章 Regret
岡田が氷を入れたグラスに水を注ぎ、それを俺に差し出した。
「飲め。ちったぁ、スッキリするだろうから…」
「ああ、すまない…」
岡田の手に支えられながらグラスを傾けると、キンと冷えた水が、ヒリつく喉にやけに染みる。
「なあ、櫻井? お前が弁護士でありたい、と思うのは、大野の為なのか?」
岡田が吸い込んだ煙草の煙りを一気に吐き出し、俺の差し出した空のグラスを受け取る。
「お前がさ、大野の為に…それこそ自分を犠牲にしてでも闘おうとしてるのは、傍にいる俺が一番良く知ってるし、理解もしてるつもりだ。でもな…」
そこまで言って、岡田が蹲ったまま動けずにいる俺の肩を掴んだ。
「俺達弁護士に与えられた使命が何なのか…、忘れてないか?」
忘れてるつもりはない。
俺達“弁護士”に与えられた役割は、弁護士法第1条1項にも記されている通り、『基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする』ことであると同時に、今後同じような事が起こらない為にも、真実の解明をすること…
それが俺達“弁護士”に与えられた使命であり、社会的正義を守る上での役割だ。
それにこの胸に光るバッジに篭められた意味だって…
常に頭の片隅に置き、一時だって忘れたことは無い。
※弁護士の記章(バッジ)について
外側にひまわり、中央に計りがデザインされていて、ひまわりは“自由と正義“を、計りは“公正と平等“を追い求めることを表しています。