第28章 Regret
「あなたは大野さんとは同房だったと聞いてますが、何か心当たりは?」
恐らくこの期に及んで言い逃れ…、なんてことは、松本に限ってはないと思った。
長瀬さんの後ろ盾があったとしても、俺はこの“松本潤”と言う男を、心から信じたわけではない。
「若しくは、彼…大野さん本人から、それらしい話を聞いたことは?」
俺は畳み掛けるように、松本への質問を続けた。
決して焦りからじゃない。
ただ、真実を知りたいだけなんだ。
この男の口から語られる“真実”を…
「彼が性的暴行を受けている現場を見たことも?」
可能性はゼロではない筈だ。
松本は、長瀬さんの頼みとは言え、智君を守る役目を買って出ていたわけだから…
少なからず、智君の側には松本が常にいた筈だ。
ならばその現場だって目撃しているかもしれない。
「どうかな?」
表情一つ変えることなく無言を貫く松本から、一切視線を逸らすことなく、俺はテーブルの上のタブレットを操作した。
「これを見ても、君は黙っていられるのかな?」
タブレットに表示されたのは、数枚の写真で…
そのどれもが、病院に搬送された際に撮影された、智君が受けたであろう暴行の痕跡と思われる物ばかりだ。
当の智君ですら存在を知らない、出来ることなら一生表には出したくなかった写真だ。