第27章 Face
松本の顔が、まるで汚らしい物でも見るかのように歪められた。
「代議士だけじゃねぇ、弁護士もだな…」
確かに裏で汚い事をしている弁護士がいないわけではない。
でも俺達は違う。
そんな奴らと、一緒くたにはされたくない。
胸の奥に、怒…だろうか、小さな炎がチリチリと燻るのを感じた。
「おいおい、それは心外だな。俺達はそんな悪徳弁護士とは違うぞ?」
「分かってるよ。アンタ達は、今まで俺が見てきた弁護士とは違う。だから、こうして協力してやってんだろ? それに…」
松本が不意に俺を振り返り、フッと笑うと、遠くを見るような目をした。
「アイツが心の底から焦がれてる奴だ…。悪い奴の筈がねぇ…」
アイツ…、智君のことを言っているんだろか…
「そうだろ? “翔君”?」
“翔君”…そう呼ばれるのは、何時ぶりだろうか…
それが智君の声ではないと分かっていても、懐かしさが去来する。
「…あ、ああ、そうだな。俺達は違うから…。君が今まで、どんな弁護士や代議士を見てきたこは知らない。でも、俺も岡田も…深山さんも、違うから…」
それだけは、智君に誓って言えることだ。
「だぁから言ったろ? 世の中捨てたもんじゃねぇ、ってな」
長瀬さんの、油の染み付いた大きな手が、松本の背中をバシッと叩いた。