第27章 Face
組んだ足を解き、握った両手を膝に載せると、松本は身を乗り出した。
そしてニヤリと不敵な笑みを浮かべると、岡田がテーブルに広げたファイルを顎でしゃくった。
「この資料は、君にとってあまり望ましくない物のようだね?」
テーブルの上のファイルを全て閉じ、岡田は 松本と同じように身を乗り出した。
「但し、記録だけは取らせて貰う。いいよな?」
「ああ、構わねぇよ…」
岡田は俺の手元のタブレットに視線を向けると、合図…だろうか、小さく頷いてみせた。
記録係をしろ、ってことか…
俺はタブレットを閉じると、代わりに文書入力の出来るアプリを立ち上げた。
それを見てか、岡田がお茶を一口啜ると、一つ咳払いをした。
「では、さっきの繰り返しにはなるが、君はどうしてお父さんの跡を継ごうとは思わなかったんだい? 聞いたところによると、君は一流の高校も出ているし、有名大学への入学も決まっていたようだが…。どうしてなのかな?」
さっきまでとは全く違う、岡田の穏やかな口調に、松本は握った手にギュッと力を篭めると、
「代議士なんてクソみてぇなもんだ…」
吐き捨てるように言った。
「特に俺の親父はな…」
「ほお…、どうしてそんな風に?」
決して急かすわけではないが、その先を促すように岡田が問い掛けた。