第27章 Face
俺は手元にのタブレットを用意して、つい二、三日前に岡田から送られて来た松本についての資料を開いた。
そこには、松本についての略歴が書かれていて、確かに岡田の言った通り、代議士の長男であることが明記されていた。
「答えたくない…のかな? では、質問を変えよう。ご両親…つまり君のお父上は、君に跡を継いで欲しいとは言われなかったかい?」
穏やかな口調で、岡田が松本に問いかける。
でも松本はそれには答えようとはせず、口を真一文字に結んだままだ。
「参りましたね…」
困った様子で深山さんが小首を傾げ、隣の岡田を見た。
岡田も長い息を吐き出すと、それまで着ていたジャケットを脱いで、ソファの背に引っ掛けた。
「君は何か勘違いしてないか? ここは法廷ではないんだよ? 黙秘権なんてものは、なんの役にもたちゃしない。それに、俺達は別に君を裁くつもりもなければ、罪に問うつもりもない」
そうだ、俺達は裁判官でもないし、ましてや警察でもない。
松本を裁く権利なんて、俺達にはないんだ。
「教えてくれないか、君のことを…」
岡田の真剣な眼差しと口調に、松本の表情がほんの少し緊張を解いた。
そして、
「分かったよ…。少なくともアンタらは“敵”ではなさそうだからな…」
「ああ、敵じゃないよ? 寧ろ俺達は君を“味方”だと認識しているがね?」
岡田の表情に漸く笑みが戻り、長瀬さんもやれやれとばかりに肩を竦めてみせた。