第27章 Face
何かあったんだろうか…
「どうしました?」
突然の電話に、若干の不安を感じつつ、電話の向こうの深山さんに問いかける。
「大したことじゃないんですけど、たった今警察から電話がありまして…」
警察…?
警察がどうして…?
「それで、何て?」
「どうやら放火犯が捕まったらしいんですけど、面通しをして欲しいと言われたんですが…。どうしましょう?」
俺は電話を耳に宛てたまま、隣でハンドルを握る岡田をチラリと見やった。
すると、電話の音声が漏れ聞こえていたのか、岡田が眉間に皺を寄せ、首を捻った。
「どうする?」
俺はそんな岡田に敢えて問いかけてみるが、表情を一層険しくするだけで、答えは返って来ない。
仕方なく深山さんには、帰ってから相談しようと伝え、俺は電話を切った。
その途端に、岡田がそれまで閉じていた口を開いた。
「面通しねぇ…。ってことは、少なからず、何らかの形で関わりのある人間、って事だよな…」
「と、なるとやはり怨恨の線か…?」
長瀬さんに対する復讐心からの犯行…そう考えるのが妥当なのか…
「だろうね? ただ、まだ詳しく話を聞いてみんことには、何とも言えんがね?」
それは、俺達への“妨害”若しくは“警告”の線も拭いきれない、ってこと…なのか…?
「とりあえず、先を急ごう」
「そうだな…」
俺達は後部座席の二人を気にかけつつ、顔を見合わせると、小さく頷き合った。