第27章 Face
「とりあえずここじゃなんだから、車に…」
岡田が心底困り果てた様子で、松本の腰を抱えて立ち上がらせる。
その顔は、俺が想像していたよりも、ずっと幼く見えて…
本当に彼が智君を?と、疑いたくなるような、そんな表情にも見て取れた。
「話しなら車の中で…。それに、君には色々と聞きたいこともあるしね?」
言い聞かせるような岡田の口調に、長瀬さんに支えられた松本は小さく頷くと、足元をふらつかせながら車に乗り込んだ。
その光景を見つめたまま、動けずにいる俺の肩に、岡田の腕が回された。
「どうした?」
覗き込む岡田の目が、俺の心の中まで見透かしているようで…
「いや…、何でもない…。急ごう」
肩に乗せられた岡田の手をそっと払うと、俺は無言で車の助手席に乗り込んだ。
不意に視界に入ったルームミラーに、膝の上で握った拳を見下ろす松本が映る。
コイツが智君を…?
どんな理由があったにせよ、智君を苦しめたことに違いはない。
俺はこの男を、許せるんだろうか…
「じゃ、行きますか…」
岡田がアクセルを踏み込んだ、その時だった。
俺のジャケットの胸ポケットでスマホが震えた。
「えっ…、深山さん…?」
表示されていたのは深山さんの番号で、一瞬岡田と顔を見合わせた俺は、迷うことなく通話ボタンをタップした。