第27章 Face
適当な場所に車を停め、そびえ立つ鉄の門の前まで長瀬さんを見送った俺達は、コンクリートの壁に背中を預け並んだ。
岡田がジャケットのポケットからタバコを取り出し、一本を咥える。
「俺にもくれないか?」
岡田に向かって右手を差し出す。
「なに、お前辞めたんじゃなかったのか?」
「まあな…」
短く返して、差し出されたタバコを受け取る。
口に咥えると、すかさず岡田がライターを差し出してくれて、俺は煙りを吸い込んだ。
…が、
「ゲホッ…ゴホッ…」
深く吸い込み過ぎたせいか、肺が悲鳴を上げ、俺は激しく咳き込んだ。
「おいおい、大丈夫か?」
思わず涙目になる俺を見て、岡田がクスクスと肩を揺らす。
「おまっ…、キツ過ぎだろ、コレ…」
「俺のせいか? お前が加減しないからだろ?」
「…にしたって、コレはキツいって…」
良くこんなモン吸えるな、と岡田に文句を言いながら、俺は遠い昔にした、智君との会話を思い出していた。
それまでタバコなんて吸ったことなかった俺に、智君が差し出した一本のタバコ…
確かあの時も俺、今みたいに激しく咳き込んでは、智君に散々笑われたんだっけ…
その時も俺は、智君に向かって今と同じ言葉を返したんだ。
「良くそんなモン吸えるね…」ってさ…
それも今となっては、懐かしい思い出…なのかもしれないな…