第27章 Face
俺は長瀬さんの話に耳を傾けながら、手元のタブレットのページを捲った。
そこには、簡単に…ではあるが、松本に関しての記述もある。
「松本の罪状は、“共同危険行為”と“傷害致死”とありますが、これに関して長瀬さんは何かご存知では?」
「いえ、俺も詳しくは…。ただ…」
そこまで言って、長瀬さんが口篭る。
俺はタブレットに落としていた視線を上げると、助手席から身を乗り出して長瀬さんを振り返った。
「ただ…、何です? 知ってることがあるなら、教えて下さい」
仮に智君の事件と関係のないことだとしても、知っておきたいんだ。
智君に関わった“人物”のことは全部…
「いえね、アイツ言ってたんすよ、とんでもねぇ奴に手ぇ出しちまった、ってね?」
とんでもない奴…
それは一体?
「今回の智君の事件に関係のある人物…でしょうか?」
「いえ、そこまで詳しくは…。お役に立てなくてすんません」
長瀬さんが申し訳けないとばかりに頭を下げた。
「そ、そんな…、長瀬さんが謝る必要はないですから…」
事実、長瀬さんの協力が、どれだけ助けになっていることか…
それに、ボヤ騒ぎだってもしかしたら…
頭を下げなきゃいけないのは、寧ろ俺の方だ。
「調べる余地はありそうだな」
それまで無言を貫いていた岡田が、独り言のように呟く。
俺もそれには無言で頷いた。