第27章 Face
「放火に間違いないのか?」
「詳しい事は、長瀬さんに直接話を聞いてみないと分からないが、現場検証に当たった警察と消防の話では、“放火”と見て間違いはないそうだ」
長瀬さんの工場で起きた火災が、本当に“放火”であるとしたら、理由は?
ただの“愉快犯的犯行”なのか、それとも…?
「犯人に心当たりは? 目撃者とか…」
俺は矢継ぎ早に岡田に詰め寄った。
でも岡田は首を横に振るばかりで…
「そっか…。目撃者もいないんじゃ、どうしようもないのか…」
諦めにも似た気持ちで俺は溜息を一つ落とし、岡田の手に重ねていた手に力をこめた。
「まあな…、あの人今でこそああだけど、昔は相当なことしてたみたいだしな? 敵も少なくはないかもな?」
そうだ。
長瀬さんには“前(前科)”がある。
もしかしたら過去に恨みを持った人の犯行、ってことだって考えられなくはないが…
でも本当にそうなんだろうか…
まだ他に理由があるんじゃないのか?
「あ、それより例の“松本”は?」
長瀬さんが柄受け出来ないとなると、松本の出所はどうなる?
「それなら、心配はないよ。現場検証も済んでる事だし、後始末は侑李に頼んであるそうだから」
そう言って、岡田が少しだけ頬を緩ませた。