第27章 Face
お互い口を閉ざしたまま、車が走り出した。
その間も、ハンドルを握る岡田の顔は、強ばったままだ。
正直なとこ、こういう時の岡田には、話しかけることさえ躊躇われる。
俺は複雑な心境のまま、車窓から流れる景色に視線を向けた…が、
「えっ、この道…」
明らかに刑務所とは違う方向に、岡田の車は向かっている。
「岡…田…?」
俺はシフトレバーを握る岡田の手に、自分の手を重ねた。
「何があった?」
俺の問いかけに応えることもなく、岡田が路肩に車を停めた。
「一体どうしたって言うんだ? 今日のお前、らしくないよ?」
どんな時も冷静さを欠いたことなんてないのに…
そう…あの時を除いては…
「何があった?」
もう一度同じ問いかけを繰り返す。
すると岡田は、シートに深く背中預け、空いた腕で顔を覆った。
「長瀬さんの工場が火事になった」
「えっ…、それで長瀬さんと侑李は…」
「幸い火事とは言っても、“ボヤ”程度で済んだから、二人に怪我はないが…」
「良かった…」
俺はホッと胸を撫で下ろした。
「原因は分かってるのか?」
「いや、まだ。ただ、放火であることは間違いないらしい」
放火…
このタイミングで?
偶然にしては出来すぎじゃないのか?
俺の頭に、いくつかの疑問が浮かんだ。