第26章 Related
「だろ?」
短く言うと、岡田はまた視線を車窓へと向けた。
もし…、もしも俺達が考えてることが事実だとしたら、智君は”何者”かによって暴行を受けていて、それを知った松本が、更なる暴行を防ぐために智君をレイプしていた、ってことになる。
それこそ”使い物”にならなくなるまで…
「今まで黙ってたんだが…。井ノ原医務官がな、前に言ってたことがあるんだけどな?」
そこまで言って、岡田が急に口籠る。
そして信号が青に変わると同時に、アクセルを踏み込んだ。
「アイツな、収監されてからすぐ…だったかな、首吊って死のうとしたって…」
「う…そ、だろ…? そんなこと今まで…。どうして教えてくれなかった!」
車が走行中でなければ、俺は間違いなく岡田に掴みかかっていた…のかもしれない。
「お前が冷静さを見失うと思ったからだよ。冷静な判断が出来なくなったら、それこそどれだけの証拠並べ立てたところで、勝てるわけないからね」
岡田の言いたいことは分かる。
それに現実問題として、弁護士が身内の起こした訴訟問題に介入することは、あまり喜ばしくは思われない。
…と言うよりは、寧ろ禁止されていると言っても等しい行為だと言うことも、十分理解はしている。
もっとも、俺は智君の親族でもなんでもないが…
ただ、”恋人”という立場は、非常に複雑であることは間違いない。