第26章 Related
「済まなかった。話の続きを…」
俺のためを思ってのこと…
そう思ったら、目頭が熱くなる。
「ああ…。俺も確認を取ったわけでもないし、井ノ原医務官も明言を避けてたから、これはあくまで”憶測”でしかないんだが…。その時の第一発見者が、松本だったんじゃないかと思うんだ」
岡田の弁護士としての”勘”ってとこだろうか。
ただこういう時の岡田の”勘”は良く当たる。
「じゃあ、それも併せて松本には話を聞かないとな…」
俺が言うと、岡田は”そうだな”と小さく頷いて、ブレーキを踏んだ。
車はいつしか俺のマンションの下まで来ていた。
俺はシートベルトを外すと、後部シートに置いた鞄に手を伸ばした。
「お前、大丈夫か?」
不意に聞かれて、俺は伸ばした手を引っ込めた。
「何が? 俺は何も…」
「いや、そうじゃなくて、松本は大野を、その…守るためとはいえ、レイプしてたんだぞ? それも一度や二度じゃなく…」
「勿論冷静じゃいられないだろうな…。顔見た瞬間、ぶん殴ってやりたくなるかもしれない」
理由はどうあれ、智君を泣かせた罪は重い。
でも…
「俺は大丈夫。心配すんなって…」
確かに身体は穢されたかもしれない。
でも智君の心は、いつだって綺麗なままめ俺の傍にある。
それだけでいい…
「分かった。なら安心だ」
俺は再び後部シートに手を伸ばすと、鞄を手に取り、助手席のドアを開けた。
「じゃあ、また…」
「ああ、また連絡する」
短く言葉を交わし、俺はドアを閉めた。
岡田がアクセルを踏み込み、車が走り出すのを確認して、俺は漸くマンションのエントランスを潜った。
『Related』完