第26章 Related
松本の柄受けの際にまた、と約束を交わし、俺達は長瀬さんの工場を後にした。
全身に疲労の色を纏った岡田のことを考えれば、運転ぐらいは変わってやりたかったが、岡田はそれを拒んだ。
余程俺の運転には信用がないらしい。
「これは俺の考えなんだが…」
片手でハンドルを操作しながら、岡田がポツリ呟く。
「松本、って奴は、もしかしたら大野を守るために…ってことは考えられないか?」
「それはどう言う…?」
岡田の言ってる意味が、俺には分からない。
俺は真っ直ぐ前だけを見ている岡田を見やった。
「医者が言ってただろ? 日常的に性的暴力を受けていた、と…。その相手、ってのは“松本”一人に限ったことではないんじゃないか、ってね?」
「そんな…」
俺は背中に冷たい物を感じて、思わず両手で身体を抱きしめた。
考えなかったわけじゃない。
寧ろ考えようとしなかっただけだ。
智君からハッキリと聞いたわけじゃないけど、もしも智君に性的暴力を行っていたのが、複数であったなら…
どれ程苦しかったことか…
「でもそれがどうして…?」
「仮にさ、“使い物”にならない、って思ったら? お前ならどうする?」
俺なら…
「使えるようになるまで待つ…。
あっ…、そうか…」
丁度その時信号が赤に変わり、俺達は顔を見合わせた。