第26章 Related
「奴なら確か…」
長瀬さんが席を立ち、事務机の引き出しを開けた。
そして一枚の葉書を取り出すと、それを俺達に向かって差し出した。
それは仮釈の日時を知らせるための物で、柄受け(身元引受)に関しての記載がされた物だった。
「彼は出所後どちらへ? ご両親の元へ?」
岡田が葉書に書かれた日時を手帳に書き込みながら言う。
実家に戻るつもりなら、当然通知は両親の元へ届く筈だ。
でもそれがここにあるということは…
「それがですね、奴の両親は健在なんですがね、まあ勘当同然でして…」
行く当てはない、ってことか…
「なんでね、ウチで引き取ろうかと…。その方が奴のためにもいいんじゃないか、って思いましてね」
長瀬さんが…?
松本を…?
それはもしかしたら俺達にとって、好都合なんじゃないか?
ここなら…長瀬さんの元なら、俺達も気兼ねなく松本から話を聞くことだって出来る。
仮に弁護士バッジを一度は外した俺にも、ここでなら”接見”が可能になる。
「それは都合がいい」
お互い考えることは同じだ。
俺達は顔を見合わせると、向き合ったまま小さく頷いた。
「長瀬さん、無理に…とは言いませんが、この日、俺達も同行させて貰えないでしょうか?」
手帳を閉じ、岡田が長瀬さんに小さく頭を下げた。