第26章 Related
突如として重くなった空気に、暫くの間沈黙が続いた。
岡田も、侑李も、そして俺も、一言も発すること無く、ただ長瀬さんを見つめていた。
その時間に、最初に堪え切れなくなったのは…
長瀬さんだった。
フッと息を吐いてから、天井を仰ぎ見ると、薄らと髭に縁取られた唇が、ゆっくりと動き始めた。
「大野さんが収監されたのが、松本と同じムショだと分かった時、俺は大野さんのことを頼むために、松本を訪ねたんです。
信じてましたからね? 殺しなんて、大野さんに出来る筈ありませんから。
でも…そん時にはもう遅くて…」
長瀬さんが膝の上で作った拳を、ギュッと握った。
「松本の奴、大野さんのことを…」
「レイプ…してた、ってことですか?」
岡田の言葉に、長瀬さんが小さく頷く。
「俺、言いましたよ、大野さんは俺の大事な友人だから、これ以上は手を出すな、ってね…」
「彼は…松本さんは、なんて?」
「分かった、と…。その上で、大野さんのことは任せてくれ、とね…。
まあ、こんな結果になってしまったのは、申し訳もない事ですが…」
長瀬さんが心底悔しそうに唇を嚙んだ。
そして、
「力が及ばず、すんませんでした…」
そう言って俺に向かって深々と頭を下げた。