第26章 Related
「頭上げて下さい」
俺は席を立つと、頭を下げ続ける長瀬さんの肩に手を乗せた。
そして長瀬さんに向かって、今度は俺が頭を下げた。
結果はどうであれ、長瀬さんが智君を守ってくれようとしたことに違いはない。
それに…
「信じてくれてありがとうございます」
智君の無実を信じてくれる人がいた。
それだけで俺は…
「ところで…」
お互いに頭を下げ合う俺達の間に割って入ったのは、岡田だ。
岡田は手帳を開き、そこにペンを走らせた。
「その“松本”さんとはその後?」
そう言った岡田の目の奥が、キラリと光った…ような気がした。
「え、ええ…、一度、いや二度かな、面会に行きました」
「その時、松本さんは大野に関して何か言ってませんでしたか?」
長瀬さんは天井に向けた視線をグルリと巡らせた。
「些細なことでも、何でもいいんです。何か変わった様子はありませんでしたか?」
「いや、特には何も…」
「そう…ですか…」
岡田が一旦は開いた手帳を、パタンと閉じて、カバンに仕舞った、その時だった。
長瀬さんが膝をパンと打ち鳴らした。
「大したことじゃないんですがね…。今思えばアイツおかしなこと言ってたんです」
「おかしなこと、とは…?」
仕舞った手帳を再び取り出し、岡田がページを捲った。