第26章 Related
自然と震える手で、丁寧に折り畳まれた便箋を開くと、そこに無数に溢れる見慣れた文字。
それは紛れもなく智君の文字で…
「さと…っ…」
それだけで胸が締め付けられ、目頭が熱くなる。
いつから俺はこんなに涙脆くなったんだろう…
こんなに弱くちゃ駄目なのに…
俺は目尻に溜まり始めた涙を、手の甲でそっと拭った。
俺はフッと息を吐き出すと、視線を便箋へと落とした。
そこには、季節の挨拶すらない、何ともぶっきら棒な言葉で近況を知らせる文章が並んでいて…
「智君らしいな…」
俺は思わず笑ってしまう。
「大野、何て?」
岡田が手紙を覗き込むように肩を寄せる。
「車椅子とはおさらばした、って…」
手紙には、自立歩行はまだ不安があるものの、杖さえあればゆっくりだけど、自分の足で立って歩くことが出来るようになった、と書かれている。
「そっか、良かったな」
「うん、それを聞けただけでも嬉しいよ」
俺は読み終えた手紙を、畳むことなく岡田に手渡した。
岡田はじっくりと手紙に目を通すと、
「この“皆に”ってのは、お前も含まれてるんだろうな、きっと…」
手紙の最後には、長瀬さんと侑李への言葉と一緒に、“皆に宜しく”と添えられていた。
それは恐らく、弁護士である俺達の立場を思っての事だろうと…、俺はそう思った。