第26章 Related
「こんな時間になってしまって…。すいません」
岡田が申し訳なさそうに頭を下げるが、長瀬さんは迷惑そうな顔一つすることなく、
「いえいえ構いませんよ。さ、どうぞ」
そう言って、俺達を工場の奥へと促した。
通されたのは、以前と同じ、事務所兼応接室で…
俺達は前に座ったのと同じ場所に腰を降ろすと、侑李が出してくれたお茶を一口啜った。
「で、早速なんですが、大野からの手紙って言うのは…?」
湯吞を茶托に置いて、間を置くことなく岡田が身を乗り出した。
「はい、ここに…」
長瀬さんが事務机の引き出しから、茶封筒を一つ取り出すと、それを応接テーブルの上にスッと差し出した。
「中を拝見させていただいても?」
「ええ、勿論ですとも。その為にお二人をお呼びしたんですから」
「では、遠慮なく…」
岡田が封筒を手に取る。
そして中の便箋を抜き取ると、便箋を開くことなく俺の前に差し出してきた。
「…何?」
「何ってお前…。先見ろって…」
「いや、でも俺は…」
本当はすぐにでも見たい。
でも俺はもう智君の弁護人の立場からは外れているし…
「いいから…、ほら」
中々手紙を受取ろうとしない俺に焦れたのか、岡田が俺の手首を掴むと、俺の手に手紙を握らせた。
手紙に触れた瞬間、そこに智君の姿はないのに、凄く近くに存在を感じたのは、俺の気のせい…だろうか…