第4章 Confusion
岡田が悲しそうな笑みを浮かべて首を小さく横に振る。
「なんで…!」
掴みかかろうとした俺の手を、岡田の手がやんわりと制する。
「当の本人があの様子じゃ、多分無理だろうな」
「でもやってみないと分からないじゃないか」
尚も食い下がろうとする俺に、岡田の鋭い視線が突き刺さる。
「落ち着け、櫻井。俺だって悔しいんだよ?」
岡田は俺達の関係を知っている唯一の友人だ。
その彼がこんな結果を招いたことを、何とも思っていないわけがない。
それは分かっている。
でも…
「続きは事務所に帰ってゆっくりと話そうじゃないか、な?」
「何か手立てはあるのか?」
「それは…分からない」
「…そうか」
「でもやるだけやってみようぜ?」
その言葉に俺も漸く重い腰を上げたが、急に視界がグラつき、俺はその場に崩れそうになる。
「おい、大丈夫か?」
床に倒れ込む寸前のところで岡田の手が俺の身体を支えた。
「あんまり寝てないんだろ? お前酷い顔してるぞ? 無理にとは言わないが、少し休め」
「ああ…、そうするよ」
智君のことを考えたら、呑気に休む気になんてなれっこないけど…
岡田の手に支えられながら身体をなんとか起こすと、俺は覚束ない足取りで法廷を後にした。