第4章 Confusion
「判決を言い渡す。
主文、被告人を懲役15年の刑に処す。
判決理由は…………」
裁判長の声が法廷内に響いた。
瞬間、俺の視界は溢れ出る涙で歪んだ。
智君を守れなかった…
そのことだけが頭の中で何度も繰り返される。
「手を前に…」
言われるまま両手を差し出した君の手に、手錠がかけられる。
証言台に呆然と立ち尽くす智君を見ることすら出来ず、俺は涙に濡れた顔を手で覆った。
ごめん、俺のせいだ…
全て俺が…
君は何の罪も犯しちゃいないのに…
刑務官によって脇を抱えられた智君が、法廷を出て行く姿を、俺は覆った指の隙間から見つめる。
その時、智君の顔に一瞬だけ笑みが浮かんだ。
どうして笑えるの?
どうして君は”大丈夫”なんて言えるの?
背中を丸めた後姿を見送りながら、駆け寄って抱きしめたい衝動に駆られた。
「…さと…っ…!」
俺の声は智君に届くことなく、法廷の重い扉が閉ざされた。
「仕方ないさ、あんな決定的な証拠提出されちゃ、こっちも負けを認めるより仕方がないさ」
同僚の岡田が膨大な弁護資料を鞄に詰め込みながら、俺の肩をポンと叩いた。
仕方ない…
「上告は…?」
鞄を手に、腰を上げた岡田を見上げる。