第26章 Related
「考えられるのは、揉み消しだろうな」
やっぱりそうか…
岡田の言葉に俺はタブレットの電源を落とすと、鞄の中に仕舞った。
俺はそれ以上言葉を発することなく、車窓に視線を向けると、両耳を手で塞いだ。
「何やっての、お前…」
息がかかる程の距離にいるのに、岡田の声はとても遠くに聞こえて…
「ん? 深山さん、良くやってるだろ? だから俺もちょっと真似してみた」
耳も目も塞ぐことで、俺達が見落としている、何か別の物が見えて来るような気がした。
「で、どうなの?」
「いや、何も…」
俺は岡田に顔を向けることなく、苦笑する。
でもきっと何かある筈だ。
俺達が見落としている“何か”が…
「なあ、櫻井? さっきの話だけどな…」
「さっきの、って…? ああ、“揉み消し”って話?」
「うん、まあ…。
…おっと、到着だ。またこの話の続きは後日ってことで…。とりあえず今は、大野からの手紙が先決だ」
フロントガラスの向こうでは、街灯の下に、長身の人影と、それよりも一回り小さな影が、こちらに向かって手を振っていた。
長瀬さんと侑李だ。
俺達は揃って車を降りると、人影に向かって足早に歩を進めた。
時刻はとうに8時を過ぎていた。