第25章 Confession Ⅱ
刑務官に急かされるように二人が出て行くと、いつも以上の静けさが、無機質な舎房を包み込んだ。
俺はベッドを抜け出すと、自由の効かない右足を引きずり、窓辺へと歩み寄った。
剥げ落ちた壁に手を宛て、そこに刻まれた文字を指でなぞる。
「マサキ…、お前もここにいたんだな?」
誰に問うこともなく、一人呟く。
ひょっとしてら、まだいるんじゃねぇか…?
そう思ったら、この殺風景で冷えた空間が、一気に暖かくなったような気がした。
「マサキ…、マサ………」
俺はその場にズルズルと崩れると、冷たい床にペタンと座り込んだ。
涙が次から次へと零れ落ちては、床に小さな水溜りを作って行った。
「ゴメン…、俺こそゴメン…」
お前の悲しみに…
苦しみに気付いてやれなくてゴメン…
いつしか俺の口からは、堪え切れずに嗚咽が漏れていた。
「俺も…お前を愛してた…」
嘘じゃない…
翔とは違う…別の形でお前を愛してた…
それだけは紛れもない事実。
きっと何日も何日もかけて、刻んだだよな?
そうだよな、マサキ?
「馬鹿だよ、お前…
ホンっと、馬鹿野郎だ…」
俺のことなんて、さっさと忘れちまえばいいのに…
俺はマサキが命をかけて刻んだ文字を、何度も指でなぞった。