第25章 Confession Ⅱ
「時間だ」
廊下に立っていた刑務官が鉄の扉を拳で叩く。
「ありがとう…、話、聞かせてくれて…」
俺は看護師に頭を下げると、ベッドに身体を横たえた。
「いえ…、私は何も…。ただ、私もずっと彼のことは、胸の奥にひっかかってましたから…」
看護師は小さく首を振ると、俺の脇から引き抜いた体温計の数字を、クリップボードに挟んだカルテいに記入した。
そして井ノ原に向き直ると、クリップボードを差し出し、
「井ノ原先生、後はお願いします」
と、頭を下げた。
井ノ原は彼女の手からそれを受け取ると、サラサラっとペンを走らせ、再びクリップボードを看護師の手に戻した。
「じゃ…、俺行くな?」
井ノ原が俺の肩を叩く。
「ああ…、悪かったな、無理言って…」
「乗りかかった船だ。どうってことないよ。気にすんな」
こんなことバレたら、自分の立場だって危うくなるのに…
井ノ原は人の良さそうな顔をして笑った。
「おい、何をしている。早くしないか」
痺れを切らしたのか、刑務官が部屋の入口で仁王立ちになり、鋭い視線でコチラを睨みつける。
「ああ、もう終わりましたんで…。すいませんねぇ…」
頭をポリポリ掻きながら、井ノ原が頭を下げる。
例え刑務官であろうと、上の許可なく監督業務を怠れば、ただじゃ済まないだろうな。
コイツにも立場がある、ってことか…