第25章 Confession Ⅱ
刑務官が渋々と言った様子で部屋を出ていく。
扉は開いたままだ。
俺は井ノ原に目配せをすると、俺のズボンに伸ばしかけた手を掴んだ。
「…っ!」
驚いて声を上げようとするのを、人差し指を唇に宛て制する。
「教えて欲しいんだ」
「な、何を…」
看護師の声が、恐怖から…だろうか、僅かに震える。
「ここに…この部屋に、相葉雅紀って奴がいたか?」
意識を廊下に立つ刑務官に向け、手首を掴んだまま、最大限に落とした声で聞く。
「…そ、そう言ったことは、規則で禁じられてますから…」
「分かってる。けど…教えて欲しいんだ…。アイツが…マサキのことを…。頼む…」
何でもいいんだ…
アイツが生きてた事実が知りたいんだ…
俺はベッドの上で、看護師に向かって頭を下げた。
そして井ノ原も…
「俺からも頼みます。俺も相葉のことはずっと気にかかってたんです。でも残念なことにアイツはもう…」
この世にはいないから…
続く言葉を、井ノ原が苦渋に満ちた顔で飲み込んだ。
「分かりました。でも…、私のことは…」
「分かってる。君に迷惑はかけない。知りたいだけなんだ。アイツがココで、何を思い、何を考えて生きていたのか…。どうして“死”を選んだのか…」
俺は彼女の目を真っ直ぐに見つめながら、自然と目頭が熱くなるのを感じていた。