第25章 Confession Ⅱ
「お、大野…?」
井ノ原が驚いたように目を見開く。
その隣で看護師は恥ずかしそうに視線を逸らした。
「痛むんだ。診てくれないか?」
気付け…
頼むから…、気付いてくれ…
「わ、分かった…」
井ノ原が戸惑い気味に俺のズボンに手をかけ、降ろそうとする。
が、その手が不意に止まり、井ノ原が何かに気付いたように俺の目を見た。
そして小さく頷いて見せると、後ろを振り返って、
「あの、暫く出ていて頂けませんか?」
刑務官に向かって言った。
でも、当然刑務官が首を縦に振ることはなく…
井ノ原はフッと息を一つ吐き出すと、クリップボードに挟んだカルテを数枚捲って、刑務官に差し出した。
「ここにも書いてありますが、彼、以前いた刑務所でレイプの被害に遭った経験がありましてね…。その時の心の傷がまだ癒えてないんですよ。
トラウマ、ってやつですかね…。だから出来れば、診察は極力…」
名演技だぜ、井ノ原…
医者じゃなかったら、役者もむいてんじゃねぇか…?
「そう言う事情なら…。但し五分だけだ。それ以上は許可できない」
「ええ、勿論です。ありがとございます」
井ノ原が如何にも人の良さそうな顔で笑い、頭を下げる。
五分か…
それだけありゃ十分だ…。