第25章 Confession Ⅱ
どうして今まで気付かなかった…
決して深くはない、でもしっかりと壁に刻まれた文字を指でなぞった。
おそらくはフォークか何かで刻んだんだろう。
「なあ、マサキ…。お前もこの部屋にいたのか?」
井ノ原が言ってことがある。
マサキは隔離されていた、と…。
それがこの部屋だったのか?
俺はどうしても確かめたくて…
でも、それを確かめる術なんて、今の俺には持ち合わせていない。
何しろ、この部屋から出ることは、殆どと言っていい程無いのだから…。
じゃあどうする?
どうしたら、マサキがここにいた事を確かめられる?
そうだ…、彼女なら…
結に面差しの似た、あの看護師。
彼女なら何か知っているかもしれない。
無機質な部屋に、唯一飾ることを許された壁のカレンダーに目を向けた。
彼女が回診に来るのは、決まって朝と夕方の一日二回。
でもそれだって刑務官が一緒では、無駄話をする間もない。
井ノ原の回診は、週二回…。
それも午前中と決まっている。
もしも彼女から話を聞けるとしたら…
井ノ原の回診がある…明日しかない。
アイツならきっと上手くやってくれる筈だ。
井ノ原なら…
ここで俺が頼れるのは、井ノ原しかいないから…