第24章 Confession
病院の裏口から出ると、そこにはあの時と同じ、窓を目隠しと金網で覆われた、一台のバスが停まっていた。
ただ違うのは、自分の足でステップを上がらなくてもいい、ってことぐらいだろうか…
車椅子のままでも乗降出来るように、電動のスロープが装備されている。
所謂“福祉車両”ってやつだ。
まさか自分がこんなモンの世話になるとはな…
考えたこともなかった。
「どうした?」
自分でも気付かないうちに笑ってたんだろうな…
車椅子を押す井ノ原が、怪訝そうに俺を覗き込んだ。
「いや、何でもないよ…」
簡単に返すと、井ノ原は納得したように、車椅子をベルトで固定した。
「窓の外…見てみろ」
周りの様子を伺いながら、井ノ原が小さな声で言う。
「えっ…?」
「いいから…」
意味が分からず聞き返した俺に、井ノ原が親指を窓の外に向けた。
言われるまま、俺はスモークの貼られた窓に目を向けた。
「翔…」
鬱蒼と生い茂る木々の間から、今にも泣き出しそうな顔で、コチラを伺い見る翔の姿。
「アイツ…」
嬉しい反面、暫く会えないと思うと、寂しさが込み上げてくる。
翔…
待っててくれ…
必ず戻るから…
俺の戻る場所は、お前の腕の中だから…
だから、もう泣くな…
きっと俺が気づいているとは思っていないだろう翔に、俺は心の中で囁いた。