• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第24章 Confession


病院の裏口から出ると、そこにはあの時と同じ、窓を目隠しと金網で覆われた、一台のバスが停まっていた。

ただ違うのは、自分の足でステップを上がらなくてもいい、ってことぐらいだろうか…

車椅子のままでも乗降出来るように、電動のスロープが装備されている。

所謂“福祉車両”ってやつだ。

まさか自分がこんなモンの世話になるとはな…
考えたこともなかった。

「どうした?」

自分でも気付かないうちに笑ってたんだろうな…

車椅子を押す井ノ原が、怪訝そうに俺を覗き込んだ。

「いや、何でもないよ…」

簡単に返すと、井ノ原は納得したように、車椅子をベルトで固定した。

「窓の外…見てみろ」

周りの様子を伺いながら、井ノ原が小さな声で言う。

「えっ…?」

「いいから…」

意味が分からず聞き返した俺に、井ノ原が親指を窓の外に向けた。

言われるまま、俺はスモークの貼られた窓に目を向けた。

「翔…」

鬱蒼と生い茂る木々の間から、今にも泣き出しそうな顔で、コチラを伺い見る翔の姿。

「アイツ…」

嬉しい反面、暫く会えないと思うと、寂しさが込み上げてくる。

翔…
待っててくれ…
必ず戻るから…

俺の戻る場所は、お前の腕の中だから…

だから、もう泣くな…


きっと俺が気づいているとは思っていないだろう翔に、俺は心の中で囁いた。
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp