第24章 Confession
「あと10分か…。もうそろそろだな…」
東山が腕時計に視線を落としながら言う。
あと10分…
それが過ぎたらもう翔と言葉を交わすことすら出来なくなる。
このままでいいのか?
永遠の別れではないことは分かってる。
でもこのまま翔と別れてしまっていいんだろうか?
「あのさ、5分だけでいいんだ。翔と二人っきりにしてくれないか?」
我儘だってことは承知している。
でも俺はまだ…
「分かった。5分だけだぞ? それ以上は駄目だ」
長野が俺と翔を交互に見て、東山と井ノ原の肩を叩いた。
三人が並んで病室を出て行くのを見送って、俺はベッドから腰を上げた。
傍らに立てかけてあった杖を手に取り、それを頼りに一歩一歩足を進めた。
でもそれも後数歩の所で止まってしまう。
「情けねぇな…」
思わず漏れた言葉に、俺は苦笑いをする。
「お前のトコまで行けねぇや…」
こんな所で立ち止まってる時間なんてないのに…
こうしている間にも、時間はどんどん過ぎて行くのに…
「翔…、翔…!」
自然に零れ落ちる涙を止めることは出来なかった。
決して別れることが悲しいからじゃない。
またいつか必ず会えるから…
ただ悔しかったんだ。
ほんの数歩の場所に翔がいるのに、そこへ自分の足で辿り着けないことが…悔しかった。