第1章 Falldown
法廷を出た俺は、来た時と同じバスに乗せられ、拘置所へと運ばれた。
窓には目隠しがしてあって、外の景色を見ることすら叶わない。
俺は静かに目を閉じた。
閉じた瞼に浮かぶのは、翔の涙。
あの涙は俺を守りきれなかった、翔の罪悪感が流させた涙だ。
翔は弱いからな…
そんなことを思っていたら、笑いすら込み上げてくる。
「静かにしなさい」
感情のない声が俺を咎めた。
俺にはもう、笑うことすら許されない。
この両手に嵌められた手錠は、動きだけじゃなく、俺の感情さえも拘束してしまう。
〖強盗強姦致死罪〗
それが俺に与えられた“罪状”。
強盗に入り、強姦した上に、殺した…
罪を犯した代償は“15年の禁固刑”。
最も重い刑が、俺には科せられた。
それでも“死刑”にならなかっただけましなのか…
それにしたって15年は長い。
そもそも俺は罰せられなきゃいけない“罪”なんて、犯しちゃいないんだから…
無実を訴えることは出来た。
でもそれをしなかったのは、翔のため。
弁護士である翔の立場を守るため。
犯してもいない罪に問われ、俺は“刑務所”と言う、世俗とは隔絶された世界に送り込まれる。
翔とももう会えなくなる…
これから待ち受けることなんて、全く想像もしていなかった俺は、ただ一つそれだけを悔やんでいた。